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多民族研究学会第12回大会 [大会]

期日:2009年7月25日(土)
会場:国士舘大学 世田谷キャンパス 梅ヶ丘校舎34号館3F 303教室
http://www.kokushikan.ac.jp/access/setagaya.html

開会13:00 - 13:15 総合司会:寺嶋さなえ(日本女子大学非常勤講師)
(会長・会場校挨拶)
会長 岸本寿雄
外国語・外国文化研究会会長 小崎 充(国士舘大学)

●研究発表13:15 - 15:50

1) 13:15 - 14:00
中川智視(一橋大学大学院生) 司会:長岡真吾(島根大学)
「ラフカディオ・ハーンと多文化都市ニューオーリンズ
 ――文化風土、死者との共存、言語混交」

 ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)は、1890年の来日以降、日本を題材として霊や怪談にちなむ作品を数多く出版したこと、また日本に帰化したことで、その名をよく知られている。しかし、ハーンと英語圏文化との関係は、意外なほど明らかになっていない。彼の作品はすべて英語で執筆されており、また彼自身も来日前の約20年をアメリカで、そしてその半分に相当する11年あまりの年月を、アメリカ南部を代表する都市のひとつであるニューオーリンズで、過ごした。
 発表では、ハーンが来日以降発揮した文学的想像力の一端を、ニューオーリンズに求め、探りたい。この街は、混交を基軸として独自の文化を築き上げてきた。そして、彼の作品は、その随所に文化のみならず言語の混交さえ見いだすことができる。またその墓地は”Cities of the Dead”として知られ、生者が死者を尊重する風潮が、いまもなお根強く残る。このような風土のもと培われた想像力とハーンの日本理解は、おそらく無関係ではないだろう。このような見地に立ち、3月に刊行されたばかりのLibrary of America版に収録されたニューオーリンズ時代の作品を中心的に取り上げ、考察する。


2) 14:10 - 14:55
鈴木 繁(コロラド大学客員教授) 司会:中垣恒太郎(大東文化大学)
「エイリアンになること
 ――オクティヴィア・バトラーにおけるポストヒューマン・ビジョン」

 本発表では、アフリカ系アメリカ人の女性SF作家であるオクティヴィア・バトラー(Octavia E. Butler) の1980年代後期の代表的な「異種創生三部作」(Xenogenesis Trilogy) --- 『黎明』(_Dawn_, 1987)、『成年の儀式』(_Adulthood Rites_, 1988)、『イマーゴ』(_Imago_, 1989) --- において探求されている、近代において普遍化された人間主体を問い直すバトラーの「ポストヒューマン・ビジョン」を検討する。その際に情報テクノロジー社会/文化の文脈で変化しつつある人間像を根本的に問い直す「ポストヒューマニズム」の理論を援用・改変することで、バトラーの小説が人種、ジェンダー、身体、他者との共生といった、文化理論のなかで語られるアクチュアルになっている問題系と、どのような対話を行っているかを明らかにしたい。

3)15:05 - 15:50
中村理香(成城大学) 司会:小林富久子(早稲田大学)
「アジア系文学・文学批評にみる他世界との交渉
――第三世界連帯,多文化主義,ディアスポラ/トランスナショナリズム――「アジア系ポストコロニアル批評」の可能性

 本発表は、アジア系文学および批評における「「アジア」の回復」について、1980年代後半以降のアジア系に顕著となった「文化ナショナリズム」から「トランスナショナリズム」、「ディアスポラ」へのパラダイム・シフトを基点に検証する。1996年、ポストコロニアル研究と合衆国内のマイノリティ研究(Ethnic Studies)の融合をめざし「アジア系ポストコロニアル研究」を提唱したのは、批評家キャンディス・チュウだが、そこでチュウが問題化したことの一つに、アジア系を「帝国の/少数民族」という、ある種矛盾を孕んだ複層的主体として見直すことがあった。本発表では、幾つかの事例分析をとおして、チュウのいう「アジア系ポストコロニアル」的文化横断が、他者理解という至上命題の、必要不可欠性(imperative)と不可能性(impossibility)の振幅のなかで、他世界としての「アジア」と再連結を試みる様を、先駆的文化横断形態である「第三世界連帯運動」や「多文化主義」との比較から考えたい。

●記念講演 16:05 - 17:30

岸本寿雄(多民族研究学会会長) 司会:松本 昇(国士舘大学)
「小豆島、大阪、ハーレムそしてインド
 ――私の黒人文学への軌跡」

 小豆島に引越しましたが、家が狭いため、研究書の入ったボックスを開くことができません。そのために特別講演は私にとって、大きな苦痛と試練です。アカデミックな研究を期待されている皆さんに、喜んでいただけるかどうか疑問ですが、私が黒人文学への道を選んだ動機、それに纏わる体験をお話したいと思います。
 東京から疎開し、父の故郷小豆島において、幼稚園・小学生で「部落」と出会いました。父親の戦死により、母の仕事の関係で高松、小豆島、東京等の転居の後、大阪では、小学5年生から「朝鮮人問題」を漠然と知り、高校生から大学生にかけて、日本に現存する最大の部落「釜が崎」で色々な体験をしました。その結果、大学に入り黒人文学と出会い、更に黒人文学研究者として、コロンビア大学・ハーレムにおいて、貴重な体験をしました。
 友人の計らいで、「悠久の大地」インドを5度訪問しました。それはMELUS-India (The Society for the Study of the Multi-Ethnic Literature of the United State, India Chapter)で黒人文学等に関する研究発表をするためでした。そこで見てきたこと、体験してきたことを話し、最後に黒人文学を選んだ研究者・知識人としての反省と今後の決意を申し述べたいと思います。

閉会 17:30 - 17:35
(副会長挨拶)
副会長 小林富久子
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●総会 17:45 - 18:15

●懇親会
会場:梅ヶ丘校舎スカイラウンジ(10F)
時間:18:30 - 20:30
会費:4,000円(院生・学部生は2,000円)


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